大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和44(あ)2525 決定

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人岡宏の上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも

刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

しかし、職権をもつて調査すると、原判決には以下に述べるような法令違反が存

する。

原判決は、第一審判決には法令の解釈適用の誤り、事実誤認があるとしてこれを

破棄自判し、罪となるべき事実として、「被告人は、岩手県二戸郡a村大字b字c

d番地のe旅館「A」を経営しているものであるが、被告人および右旅館女中Bに

おいて、昭和四三年一月二〇日から同年三月初旬ごろまでの間別紙一覧表記載のと

おり、同所においてCほか一名の売春婦が不特定の男客Dほか三名を相手方として

売春をするに際し、その情を知りながら右旅館の客室を貸与し、もつて売春を行う

場所を提供することを業としたものである。」と認定し、右別紙一覧表番号1、2

の二回分は、客室貸与者として右Bを掲記し、同表番号3、4の二回分は、右貸与

者として被告人を掲記し、法令の適用として、「被告人の判示所為は、売春防止法

一一条二項に該当するので、その刑期および罰金額の範囲内で被告人を懲役三月お

よび罰金二〇、〇〇〇円に処し……」とし、右懲役刑につき二年間の執行猶予を付

していることは、その判文上明らかである。

ところで、原判決は、その認定する四回の売春場所提供を被告人の売春防止法一

一条二項の罪として認定処断した趣旨か、右四回の売春場所提供のうち、前二回分

(別紙一覧表番号1、2の事実)については、右Bに対し同条項の罪の成立を認め、

同法一四条の両罰規定により被告人を処断した趣旨か、その判文上必ずしも明確で

ないと言わなければならない。したがつて、この点だけをみても、原判決には理由

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を附せず、または理由にくいちがいがある疑いがある。しかし、記録によると、検

察官の起訴にかかる公訴事実は、後者の趣旨であることが明らかであるところ、第

一審判決は、被告人および右Bについて同法一一条二項の罪の成立を否定し、同条

一項の罪の単純場所提供の成立を認定し、同条項、一四条を適用して処断しており、

原判決は、これを不服とする検察官の控訴をいれて第一審判決を破棄したものであ

り、この間訴因変更手続がとられた形跡が認められない公判経過に照らせば、原判

決は、前者の趣旨で被告人を処断したのではなく、後者の趣旨で被告人を処断した

ものと解するほかはない。

そうすると、原判決は、その判文上四回の売春場所提供のうち、二回につき同法

一四条違反の事実を認定しながら、全部につき同法一一条二項を適用した法令適用

の誤りがあるか、同法一四条違反の事実につき罰条を示さず理由を附さない違法が

あり、このため、故意犯である同法一一条二項の罪と過失犯である同法一四条違反

の罪(昭和三七年(あ)第二三四一号同三八年二月二六日第三小法廷判決、刑集一

七巻一号一五頁参照)とは別罪として処理すべきであるのに、これらを包括一罪と

して処断した結果、同法一四条違反の罪については罰金刑しか科し得ないにもかか

わらず、懲役刑を科した違法があるものと解さざるを得ない。

さらに、原判決は、第一審判決が前記Bの売春場所提供(二回)につき、同法一

一条二項の罪の成立を否定し、同条一項の単純場所提供の成立を認めて被告人を同

法一四条により処断していることが明らかであるのに、第一審判決を破棄するに当

つて、専ら被告人の同法一一条二項の罪の成否を説示するに止まり、Bの右場所提

供につき同法一一条一項の罪が成立するのか、同条二項の罪が成立するのか、その

判文上全く理由を示していないのであつて、被告人の同法一四条の違反内容となる

従業員Bの違反行為を確定しないで被告人を処断したか、あるいは、同法一一条二

項の罪の成立を前提として被告人を処断したのであれば、何ら理由を示さず第一審

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判決を破棄して被告人を処断した違法があり、いずれにしても理由を附さない違法

がある。

してみると、原判決には右説示のとおり累次の法令違反があるが、記録によると、

前記Bの売春場所提供(二回)につき、被告人に売春防止法一四条、一一条一項の

罪の成立を肯認することができるのであり、また、被告人自身の右場所提供につき

同条二項の罪の成立を認めた原判断を維持することができるのであつて、これらの

事実に正当な法令適用をしても、原判決の被告人に対する宣告刑は、右処断刑の範

囲内であり、その刑も相当と認められるから、原判決を破棄しなくても未だ著しく

正義に反するものとは認められない。

よつて、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、

主文のとおり決定する。

昭和四六年一一月九日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 天 野 武 一

裁判官 田 中 二 郎

裁判官 下 村 三 郎

裁判官 松 本 正 雄

裁判官 関 根 小 郷

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